Speaks vol.133
<<「長年の癖だから」は本当か!?>>
レッスンをしていると、
上手くできない人からこんなフレーズを聞かされることがあります。
「長年の癖だから仕方がないんですよねー」
この会話に、非常に違和感を覚えます。
なぜかというと、
あたかも自分ではない誰かがそうさせた雰囲気が漂っているからです。
本人にしてみれば、
深く考えずに「癖だから」と言っているのかもしれないけれど、
その癖は一体誰がつけたのかというと、
自分自身が長年培ってきた反復動作の結果なのではないでしょうか?
あるいは新しい打ち方を提案すると、
「動作が自然じゃない」というフレーズを聞かされることがあります。
この会話にも、非常に違和感を覚えます。
というのも、脳をとおして意識する動作は全て、そもそも自然ではないからです。
それを繰り返して下意識に落とし込んだ動作が自然なのであって、
脳を通しているうちは、不自然なのが当然です。
最初の癖の話に戻りますが、
癖は下意識に落とし込まれているので、
それはナチュラル感がアリアリでしょう。
レッスンではなぜ、
不自然な感じがするとしても新しい打ち方を提案するかというと、
よりよくなるためです。
今が快適でさえあればいいのなら、
不自然さを強いてまで変える必要など何もない。
癖で動いているうちは、快適感がアリアリでしょうから。
でも、それよりもよりよくなるために、
不自然な動作を強いるのです。
どんなことでも、最初は上手くできません。
例えばキーボードのブラインドタッチなども、そうだったのではないでしょうか?
繰り返し反復して下意識に落とし込んだから、できるようになったはずです。
当初は、キーに対する指の配置にも違和感があったでしょう。
人さし指だけで打つのが快適だった初心者の頃は、
「え、ここで薬指使うの?」という不自然さに戸惑ったに違いありません。
でも今は皆さん、何も意識せずに薬指も使って打ちますよね。
「癖だから仕方がない」といって人さし指だけのタイピングを続けていては、
今のスピードにはたどりつけなかったはずなのです。
テニスもこれとまったく同じです。
「癖だから仕方がない」「違和感がある」といって嘆いている人は、
人さし指でタイピングするレベルに甘んじています。
だけど、皆さんの能力はもっと高い。
反復練習によりブラインドタッチのようなテニスへと洗練させることが可能です。
「でも、私には反復してもセンスがないからできない」という人もなかにはいます。
しかし実は、センスの有無ではないという話を次回は紹介しましょう。
今回の話を踏まえた上で、
反復練習の効果が出る人と出ない人の決定的な違いについてお伝えします。
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広