Speaks vol.167
  <<「言われたことを忘れちゃう!」のはなぜ?>>

レッスンで、打ち方などを説明したとしても、
生徒さんの中には「言われたことを忘れちゃう!」という人がいます。

例えば「ラケットを早く引いて」と、アドバイスをします。
すると生徒さんも、最初のうちは、早く引けるようになります。

ところが5~6回ほど打っているうちに、できなくなる。
「忘れちゃう!」のだそうです。

しかし実際には、忘れるわけではありません。
その人は5~6回打っているうちに、「早く引く」矯正から意識が逸れ、
自分の打ったボールの行方が気になり始めたのです。

コートに入ったか入らなかったかの結果を、
「早く引く」などお構いなしに、見たくなってしまった。
意識が、矯正から、ボールを見たくなる欲へと、移ろってしまったのです。

3~4歳の子どもを対象にした、こんな実験があります。
ここにお菓子がある。
(A)は、「今すぐ食べたら、1個だけ」
(B)は、「20分間我慢できたら、2個あげる」

この場合、10年後の将来まで追跡調査したところ、
我慢できた(B)の方が、成績が良いと判明しました。

我慢強い方が成功するというのは普通の話ですが、
ポイントは、(B)を選んだ子どもたちに共通していたのは、
お菓子を「見なかった」ということ。
こちらはわざと、欲から意識を逸らせたのです。

さて冒頭の「忘れちゃう!」の話に立ち返りましょう。
その生徒さんにとって自分の打ったボールの行方は、
「見たいもの=お菓子」なのです。

しかし成績が上がるのは、
お菓子を見ずに我慢した(B)の方でした。

つまり、見たいボールの行方(お菓子)を見ることなく、
我慢すれば、ラケットを早く引くアドバイスを忘れないから、
将来的に成績が良くなる(上達する)という、
実験通りの結果が出るはずです。

もうひとつ今回の話を裏付ける例として、
皆さんもよくご存じの象徴的なエピソードをご紹介しましょう。

昨年の全米オープンでは、
男女を通じて日本人として初めて、
グランドスラムのシングルスタイトルを獲得した大坂なおみ。

決勝戦は相手のセリーナ・ウイリアムズが、
警告を受けるなどして主審に噛みついたりし、
異様なムードに包まれました。

しかし大坂はその様子を、
意識的に「見ない」ようにしていたそうです。

「見たかった」に、違いありません。
世界中が大注目した乱痴気(らんちき)騒ぎです。
しかし自分にとってアイドルだったセリーナが、
感情的になっているさまを見れば、どっぷりハマってしまう。

見ないように、我慢しました。
その結果、影響を受けずに済み、
見事勝利を引き寄せたのです。

結果を出すには、一時的に欲から離れる必要もあります。
お菓子を我慢できた子どもの方が、成績が良くなったように。

姿や形にだけ囚われるのは良くないですが、
皆さんもフォームを整える上達過程においては、
見たい結果を見ないように、心掛けてみてはいかがでしょうか?

そうすれば、「ラケットを早く引く」を忘れてしまう心配がなく、
コーチに言われたアドバイスを忠実に実行できるため、
将来的には上達します。

欲を断ち切るには、欲が出てくるものを見ない。
単純だけど、最も効果的な方法だと思います!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広

さあ、このSpeaksを読んだらさっそく練習しましょう!!レッスンへGO!!
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