Speaks vol.95
  <<思い込みの枠を外そう>>

ドロップショットばかり打って、嫌な性格と言われる。
つないでばかりだと、慎重な性格と言われる。
すぐにバーンと打ってミスすると、我慢強くないと言われる。

確かに、テニスのプレーには性格が現れます。
だけど、だからと言って、
自分の性格に合わないプレースタイルは、マスターできないでしょうか?

そんなことはありません。
例えば昔、スウェーデン選手は、
機械のように精密な同じボールを繰り返して打つ
マッツ・ビランデルのようなプレースタイルがよく見られました。

だけどビランデルの性格は、
慎重というよりもワイルドだったと言います。

かと思えば、同じスウェーデン選手でも
ステファン・エドバーグは、
サーブ&ボレーでネットを主戦場とする超攻撃的なプレースタイル。

だけどその性格は、
虫1匹殺せない優しい心であったと言います。

つまり性格は、テニスに現れるけれど、
プレースタイルとは、ポイントを効率的に得るための手段であり、
性格に合わなければ習得できないというわけではない
練習で身につけられるスキルと言えます。

性格がよくても、ドロップショットを打っていいし、
慎重派でも、ハードヒットを武器にしてもいい。
我慢強くなくてもストローク戦で粘ることは、
技術を身につけることにより可能になるのです。

何が言いたいかというと、
「自分の性格はこうだから」という枠の中でしかプレーしていない人があまりに多く、
そのために、自らの可能性を狭めているのがもったいないということです。

自分はガンガン打つトップスピンが好きという性格の人が、
ゆっくりと打つスライスを覚えたら、
緩急をつけたテニスが手に入ります。

我慢強くない人が、あと1球だけ多く返せば、
今までとはまったく違った別の世界が目の前に開けるでしょう。

これまでの日本人男子テニス選手は、
「日本人だから」という理由で、
トップ100位以内が狙えないという思いが支配的だったかもしれません。
しかし今は、立て続けに100位以内にランクされる選手が出現。

「日本人だから」という枠は、もう完全に取っ払われました。
私たちも思い込みをなくせば、もっと飛躍できるはずです!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広