Speaks vol.39  <<「負け癖」を考える>>

突然ですが、あなたは試合に出たときに、
本当に「勝ちたい」と思っているでしょうか?
「そんなの当たり前だ」「勝ちたいに決まっている」という声が聞こえてきそうですが、
負けが込んでいる、いわゆる「負け癖」がついてしまっている人は、
勝ちたいレベルが低まっている可能性があるので注意が必要です。

負けが続くと試合に出ても勝てる気がしなくなる。
戦う前から「負けるだろう」と思い込み、極端な言い方をすれば
「負けようとしている」状態に近くなっていることがあるのです。
あなたに思い当たるふしはないでしょうか?

試合というのは不安や緊張など、ストレスの塊です。
相手も勝つためにプレッシャーをかけてくるので、
その圧迫感たるや相当なもの。
「負け癖」のある人は、そういう局面に際した場合、
圧迫から逃れたいがために勝負をあきらめたリラックスの仕方や、
ファイトする状態からエスケープする感じの態度を取りがちです。

試合後にまるで「負けたけど、自分は真剣に戦わなかったから」とでも言わんばかりに。
敗戦後にまるで「全力でプレーしなかった」
(だから負けても仕方がなかったよ)とでも言わんばかりに!

でもその態度は、ウルトラしょぼい。
もちろん勝った相手を称えて、負けた自分を認めるのも勇気でしょう。
しかし試合そのものには全力でファイトする姿勢が必要。

もちろん、「いや、自分は頑張っているけど負けてしまう」という人もいるでしょう。
そういう場合は「何に対して頑張っているのか」をよく考えてほしいのです。

先述したとおり試合はストレスの塊です。
だから出場し、コートに立っているだけでも頑張っているつもりにはなるのですが、
それは率直に言えばレベルの低い戦い方。
何の戦いをしているのかという根本的な部分を、
考え直してみる必要があるでしょう。

相手のほうが「うまい」「強い」「自分よりも経験がある」
「勝てる見込みがない」だなんてあれこれ邪推するのではなくて、
まず目の前の人と本気で戦う姿勢が大事です。
「自分のほうが弱くても、戦って勝ってやる!」と思えるかどうかが重要。
その上で勝てば素晴らしいし、負けたら至らないところも分かるようになる。

このステップを踏んで次の試合につなげなければならないのに、
「負け癖」がつくと嫌なことにふたをして、負けたことはサッサと忘れる。
敗戦の理由をかえりみないから、なぜ負けたのかを理解できずに、
そのうち本気で戦う姿勢も見失ってしまうのです。

あなたに思い当たるふしはありませんか?
振り返ってみると、何かしらの発見があるかもしれません。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広